今回はゴーイング・メリー号の船体工法である「カーヴェル造り」についてご紹介します。
工法の比較としてクリンカー造りとの違いも解説するので、メリー号の造船について興味がある方はぜひご覧下さい。
ワンピースにおけるカーヴェル造り
ワンピースでカーヴェル造りという単語が出てきたのはメリーによるゴーイング・メリー号についての説明をしていた時です
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(C)尾田栄一郎/集英社 『ONE PIECE 5巻』より引用
作中においてカーヴェル造りと明言されているのはゴーイング・メリー号だけ(のはず)ですが、後述するカーヴェル造りの特徴から、ワンピースの世界の多くの船はカーヴェル造りであると予想されます。
このページを見た後、他の船の造りがどうなのか。実際にマンガを読んで確認してみて下さい!
カーヴェル造りについて解説
カーヴェル造りとは?
カーヴェル造り(Carvel construction)は、船の外板(プランク)を縁と縁をぴったりと合わせて貼り付けていく造船方法です。滑らかで平らな船体表面を持つのが特徴で、内側には頑丈なフレーム(肋骨のような構造)がしっかりと組まれています。この方法では、船体の形状はフレームによって決まり、外板はそれに沿って固定されます。
古代エジプトや地中海地域では、紀元500年ごろからこの技術への移行が始まりました。完全なフレーム先行方式(frame-first)が広まったのは9世紀以降で、建造効率の向上とコスト削減が大きな理由とされています。
クリンカー造りとの違い
カーヴェル造りと対比されるのが、北ヨーロッパで長く用いられたクリンカー造りです。
特徴 | カーヴェル造り | クリンカー造り |
---|---|---|
プランクの貼り方 | 縁をぴったり合わせる | プランク同士を重ねる(段々になる) |
外観 | 滑らかで平ら | 段差がある |
強度 | フレームと密着した板で高剛性 | 軽量で柔軟性がある |
向いている用途 | 大型船・重貨物 | 小型船・荒波に強い |
船の外板の縁をピッタリ合わせて貼り付けるカーヴェル造りに対し、クリンカー造りは外板の端が重なるような構造で造られています。クリンカー造りの船は軽く、波にあわせてねじれる構造のため、北大西洋の荒波を走るバイキング船などに最適でした。しかし、構造上の制約から大型化には限界がありました。一方、カーヴェル造りは剛性が高く、より大きな船体を安定して造れるため、外洋航海を担う船へと発展していきます。
カーヴェル造りの代表的な船
カーヴェル造りが取り入れられた船として代表的なのがキャラベル船です。15世紀のポルトガルやスペインで活躍し、コロンブスの航海にも使用されました。また、デンマーク(ノルウェー)王ハンスの旗艦「グリブスフンデン号」も、バルト海域の初期のカーヴェル造りの例として知られています。
現代のカーヴェル造り
伝統的なカーヴェル造りでは、プランクの間にコーキング材(柔らかい繊維素材と接着材)を詰めて水漏れを防いでいました。しかし現代ではエポキシ樹脂などの防水接着剤を用いて、プランクを接着し滑らかで耐久性のある船体が造られています。この技術革新により、小型ボートなどにも応用され、釘を使わない造船も可能になりました。
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